紙の本の美しさ
ヤフーニュースの特集記事を読むのが好きだ。
今後はニュースを読んで感じたことなどを書いていく機会が増えるかもしれない。
本が売れなくなったのは?
紙の本が売れなくなくなったと言われて久しい。
実際にニュースのなかでも、
紙媒体の雑誌と書籍の売り上げは1996年の2兆6564億円をピークに毎年下落を続けており、2015年には1兆5220億円まで落ち込んでいる。
とあるように、かなりの落ち込みっぷりである。
この事態をどう考えるかだが、僕は記事のなかで干場弓子氏が言われているとおり、本そのものが売れなくなったのではなく、メディアの変化によるものだと思う。
インターネットが普及する以前は、本や雑誌というものがほとんどの人間の情報源だった。もちろんテレビやラジオもあったが、依然として本などの優位性は確保されていたことだろう。
だが、ネットの普及により事態は変わった。
より安価に、ときには無料で情報が手に入るようになった。しかも本一冊読むよりも簡単に情報が手に入る。
さらにYoutubeやニコニコ動画、その他諸々のネットサービスも増えたし、スマートフォンも普及した。以前より各人が格段にネットにアクセスする時間が増えた。そして、ネットビジネスも本格化し、サービスも増える。そうなると当然、人々はそちらの方へ流れていく確率が高くなる。なにしろ情報配信の速度が段違いなのだ。
本や雑誌は実際に店舗に行かなければ目にすることはない。いや、電車の中吊り広告なんかもあるし、新聞の広告もあるが、最近の人間はスマートフォンを眺める時間が長いので、そういった広告にはあまり目を留めない傾向にありそうだ。
このように、ネットの普及は相対的に紙媒体の地位を低下させてしまった。
千場氏の、
「本がだめになった」というよりは、情報や娯楽にアクセスするための手段が分散した、ということですね。
という言葉には、すっと納得できる。
本ならではの価値
では、紙の本は今後どうなるのか?
この世の中から消えてしまうのか?
僕は「人間の今後の選択による」と考えている。
本には電子情報にはない価値がある。
物体としての書籍
紙の本はネットの情報と違って、実際に印刷されてあるものがそこにある。
なのでまず、装丁などにこだわり、その美しさや見た目の面白さを味わうことができるようになっている。いわゆる「美本」というのはこの世の中に確実にあり、その装丁の美しさだけで購入欲をそそることも可能だ。
最近僕が買った本は美しかった。
表紙の文字色が、金色でなく真鍮色なのがまた良かった。落ち着いた印象を醸し出す。中身にもところどころで遊び心があり、脚注の説明のページで色を変えてあったりする。かなりこだわりが光る「逸品」だ。
つまり、紙媒体は「ひとつの作品」たりえる、ということだ。
ネットの情報はどうしても右から左へと流れがちだ。それはそれでいいのだと思う。情報の速度が売りでもあるのだから。本は情報の速度では劣るが、その点を逆手に取れば、ネットの情報では出せない魅力を持たせることができるのではないか。
多くの情報量を抱えられる
やはりネットの情報との大きな差はここだろうか。
紙の本は、ひとつのテーマに沿ったすさまじい分量の文章を抱えることができる。そして、読者はそれらの情報を休憩しながら読めばいい。ネットだと、たとえばすさまじい分量の文章がひとつのブログで公開されると、読む側としてはだいぶ辟易してしまいそうだ。
その点、本ならば問題ない。むしろ、ものすごい分量の文章を抱えていることに価値がある場合もある。
ひとりで向き合う時間をつくる
ネットの情報というのは双方向の性質を持っている。筆者と読者がコンタクトをとることができるのだ。しかしそれは同時に、ひとりの時間が厳密には少なくなることを示しているのではないだろうか。
最近では「デジタルデトックス」という言葉まであり、あまりにも現代人がインターネットに接触する時間が多いことが懸念されはじめている。たしかにその意見には多少同意するところがあり、あまり脳みそのキャパシティをネットに注入しすぎるのはどうだろう、と思うこともしばしばだ。
本のいいところは、ひとりの時間に没頭できるところ。誰にも邪魔されずに物語や、あるテーマについて書かれた本を読み、それらに没頭するのだ。ネットの情報はどうしても似たり寄ったりなものを集めがちだが、本はきっかけは興味本位だったとしても、思わぬところに自分の心を連れて行ってくれることがある。それだけで、見える景色が――一瞬だけだとしても――変わることもあるのだ。
書籍だからこその魅力を伸びしろとして活用することが重要か
紙の本ならではの価値というのは確かにある。
そもそも人間は「モノ」を所有したがるものだし、紙の本には歴史が宿る場合もある。持つことに意味がある本もこの世の中にはあるのだ。たとえば初版本とか。
おそらく電子書籍の市場はこれから大きくなっていくと思う。だからといって、紙の本が必ず売れなくなるわけでもないはずだ。いままでのやり方ではいけないのかもしれない。新しい方法が必要なのかもしれない。
紙の本が好きな一般人としては、すべての書籍がデジタル化したら、すごく味気ないと思う。なので、紙の本がなんとか存続していくことを願っている。
紙の本だからこその魅力。そして紙の本だからできること。
それらを探っていくことが、これから必要になってくるのかもしれない。
(画像提供元:ぱくたそ https://www.pakutaso.com/)
書籍は目
旅人になりたい、と思うことがある。
僕は欲張りなので、いろんな場所に行きたいし、いろんなことを知りたいと思ってしまう。だが、時間は有限だし、身体もひとつしかない、お金だってあんまりない。そうなると、どうしても行ける場所も経験できることも限られてくる。
そんなことを考えながら、書店の学術書のコーナーを見ていた。そうしたら、さまざまなテーマの書籍が並んでいて、当たり前だけど、いろんな人がいろんな考えを見せてくれているんだなあ、ということに気づいた。
「あ、これでいいのか」
という感覚。
自分は世界にひとりしかいなくて、行ける場所も経験できることも少ないけど、世界にはたくさんの人がいて、それだけたくさんの頭と身体と目があるということなのだ。その人たちが、いろんなことを自由に考えたり、分析したりして、本という形で伝えてくれている。最近は、ブログやウェブのコンテンツとしても伝えることができる。
ひとつの身体とひとつの脳みそ、ふたつの目しかないと思いがちだけど、知性と感性、想像力を使えば、いろんな「目」や「脳みそ」を借りることができるのだ。
これで、もっと世界を旅することができる。
そして、僕もいつか誰かの「目」になれたらいいな、と思った。