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野暮天堂

旅は道連れ、世は情け

とんぼ

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草いきれの道をとぼとぼと歩いていた
大きく負けた今日、競馬場からの帰り道
わたしは落ち込んでいるのに、とし坊はやけに上機嫌
夕日がまぶしく目に痛い
刺すような日差しに、攻められる気分でため息をついた

 

「あ、とんぼ」
とし坊が空中を見つめて言った
アキアカネが飛ぶ季節ではない
とし坊の目は爛々と輝いている
なにを見つめているのだろう
「もっと上」

 

太陽を直視しないように見上げ
手で傘をつくって空を見てみた
「ああ、なるほどね」
自然に笑みがこぼれた

 

それは見事にとんぼだった
大空を悠々と飛ぶとんぼだった
白い身を夕日が赤に染まらせて
ゆらゆらゆっくり泳いでいた

 

次第に羽は風に流され
ゆらいで消えた

 

「とんぼ、いっちゃったね」
とし坊が笑った
わたしも笑った
いつの間にかわたしの泣き虫もどこかへ飛んでいった

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