野暮天堂

旅は道連れ、世は情け

街 ~町田を歩く~

 

 バスに乗り、電車で数駅行くと町田に着く。

 町田は東京の端っこの駅だ。しかし、その町並みはなかなか面白い。

 

 朝十時頃に出向いた。

 夜になれば、繁華街として多くの人間が赤提灯求めて歩き回るこの界隈は、朝はまだ準備段階。しかし、居酒屋の従業員達はすでに働き始めている。 

 面白いものを見かけた。ある居酒屋のあんちゃんが、若い女の子と話している。同じ店で働く同僚らしい。「ふーん、若いなあ。いいなあ」などと心の中でひとりごちし、他のところを歩いていたら、別の場所であんちゃんを見かけた。おにぎり屋さんでなにやら買っていた。そのおにぎり屋の娘さんがまたかわいらしい娘なのである。いや、いいね。もしかしたら、あそこに恋の物語があるのかもしれない。そう考えながら歩いていたら、ちょっと幸せな気持ちになった。

 

 街には多くの人間が訪れる。しかし、多くの人間は互いに意識せず通り過ぎる。ただ、よく考えると、その人間一人一人に人生というものがあるのである。そう考えると、街というのは実に面白い空間だ。人生の交錯点だと言えよう。人間が作り出した有機体。街自体に生命というものが宿っている気さえしてくる。

 

 そんなふうに考えながらドトールコーヒーに入ったら、遠くの席で熟年の紳士二人が、なにやら議論をしていた。何を議論しているのだろうと耳をそば立てていたが、会話の内容が皆目見当つかない。しかし、どうやら土地のことについて話しているらしい。実に興味深い。何を話しているのだろう。だが、ドトールコーヒーで長居は無用。しっかり「勉強などの長時間のご利用はお控えください」とのお達しがあった。

 

 街を眺めるのは面白い。私はこの世界に退屈することはないだろう。人間がいて、その人間が文化を作っている。そして、物語が生まれては消えていく。そんなこの世界を眺めることが、どうしてつまらないと言えるだろう。

 

 最近になって、人間や、彼らの生み出す人生というものがやけに面白く感じるようになったのは、きっと、こんな感覚を抱くようになったからだ。

 

 人間は面白い。どうしようもない部分を持っていたとしても、だからこそ、面白い光景を生み出しているのだ。もしも透明人間になれたなら、私は一日中人間を観察していることだろう。そして、その魔法が解けたとき、何かを書き、記録するだろう。

 

 人間模様というやつが、たまらなく面白い、と感じた今日なのであった。