野暮天堂

旅は道連れ、世は情け

人間様、春ですよ、と鳥が鳴く

コロナで人間界は様変わりしたけど、自然界は通常運転のようである。窓の外から、春の鳥の鳴き声がする。あれは、ウグイスなのだろうか。なんとまあ、うららかで平和な響きなのか。平常時だったら、うーん春だねえ、と独りごちるんだろう。

 

本日、神奈川県は晴天であった。よく利用する路線に、「田奈」という駅がある。自分がその駅で降りることはないけど、その駅から見える景色は最高だと思っている。高いビルがない地域だから、空が広く見えるのだ。今日、そこから見えた景色も最高で、穏やかで、平和的だった。春の夕空は、人間の街をゆるやかに照らしていて、小高い場所にある民家の窓をオレンジ色に輝かせていた。

 

人間界の現実は厳しさを増し、停滞感を漂わせるけど、そんなことは人間以外にとっては、たいして関係のないことなのだ。そんな事実が、どこかもの悲しく感じられたが、それはただの個人的な感傷なのだということも、また事実である。

 

多くの商業施設で、週末の営業休止が発表されている。自分がよく行く施設も、軒並み休業である。よって、どこにも行けない。本屋も開いていない、喫茶店も開いていないでは、どこにも行く当てがない。それでいいのだ。それが時代の要請であり、社会の要請である。小池さんも言っていたことだし、黒岩さんも言っていた。

 

今よりずっと時間が経ち、もしもその時の自分が笑えていたら、この時分のことを思い出して「大変だったなあ」と呟くんだろう。