【エキサン♯0】散策部の発足①
こんにちは。帆村です。
「五月雨探検隊」という企画がまだ進展していないにもかかわらず、また新しい企画をスタートさせてしまうことをお許しください。
とにもかくにも、やってみたくなったら、やってみる性質でして……。
物語形式で進めたい企画です。
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淡い青い光がカーテンの隙間から滲んでいた。
早朝五時半、林茶子(はやしちゃこ)は変なメールを受信した。
誰だ、こんな朝っぱらに。嘆息ついて携帯の画面を見ると、そこには懐かしい人間の名前があった。
「恩田かよ」
少しだけ、笑みがこぼれた。
もう随分と会っていなかった。
茶子も恩田も高校を卒業し、別々の大学に進学した。もう二人とも大学三回生だ。茶子は文系、恩田は理系に進学した。
友人だと思っていたが、時の移ろいというのはある意味残酷だ。一年、二年と経つうちに、次第に交流は薄らいでいった。もともと、両人とも人間関係にドライな性格だけあって、きっかけが無ければ会わなくなるのも、当然と言えば当然だった。
そんな人間関係上の変化を、茶子はちょっぴり悲しいと思っていたが、恩田はたぶん違うのだろうと考えていた。恩田は徹底した現実主義。目に見えることだけ信じると言った明瞭な価値観を持った人間だった。虫や植物の観察が昔から好きで、随分偏差値の高い大学の理学部に入った。茶子はそこそこの学力だったので、そこそこの大学の文学部に入った。そんな恩田はきっと、わたしのことなど意にも介していないだろう。
しばらく音信不通になっていた旧友からのメール。少しだけ心踊る気分で文面を見た。
茶子は思わず笑ってしまった。だって、ジョークにしたってばかばかしすぎる。
《めがさめたらねこになっていた。やばい。たすけて。すぐうちにこい》
ひとしきり笑ったあと、やっぱり眠い茶子は、二度目の眠りに落ちた。
次に目を覚ましたら、恩田からのメールが五十件も入っていた。
しかも、全部以前と同じ文面のメールだ。
《めがさめたらねこになっていた。やばい。たすけて。すぐうちにこい》
さすがに目眩がした。五十件も同じメールを送るとはどういった神経だ。しかも立て続けて五十件も。どうやら一分おきに送信しているらしい。
恩田のやつ、研究のストレスで精神をやられてしまったのか。
きっとそうに違いない。無理矢理自分を納得させて、階下へ降りて、遅めの朝食をとった。
しばらくして自分の部屋に戻ると、さらに三十件、恩田からメールが届いていた。
これは、おかしい。いよいよ本当にやばいのかもしれない。恩田の精神が。
音信不通になっていたと言え、友人であることに間違いはない。恩田がどう思っているかは分からないが、わたしは今でも友人だと思っている。
見舞いに行ってやらねば。
茶子は着替えて、外に出た。