意外と見えない自分のこと
人は遠くを見つめたがる
自分のことは自分ではあまりよく見えない。これはよく言われることだ。
僕の場合で言うと、「書く」ことが好きだという事実に、最近になるまで気づかなかった。早くに気づいていれば、学生時代にもっと適切な選択をすることができたのではないか……そう考えることもある。
「書く」という行為があまりにも自分にとって当たり前だったために、特別夢や目標として掲げるものには思えなかった。というか、そういう意識すらなかった。なので、音楽や絵に憧れを抱いた。今から思えば、他所の芝生は青く見える、という状況だったのだろう。
自分にとって近いものは、特別なものだと感じない。
自分自身の特性に気づくというのは案外難しいことだ。
自分がすでに持っているものは、煌びやかに見えない。人間は遠くにあるものに憧れる性質がありそうだ。
だが、誰でも自分自身が持っているものを自覚すべきだと思う。
そうすれば、100%でないにしろ、自分らしい生き方・働き方を導き出すことができるのではないか。「なにがやりたいのか?」を考えることは大事だと思うけど、それと同時に「なにを持っているのか?」を考えることも大事な気がする。
労働という行為は一筋縄ではいかないものだが、それでも、より本人が働きやすく、自分を活かしやすい職場を選ぶには、自分の能力を自覚することが大事なのだろう。しかし、それは上記したとおり、案外困難をともなうものなのだろう。
ある女子学生の才能
このまえ、バスに乗っているあいだに、大学生と見られる女子二人の会話を聞いていた。風貌はギャルっぽかったし、話し方もギャルっぽかったので、「軽い話題でもしているのだろうな」と思っていたら、驚かされた。
寒い時期だというのに、生足を出して、若気を存分に発揮している女子が言った。
「そう言えば昨日さ。授業の終わりに空を見たら、すごく光っている星があったんだ。それで、気になって、国立天文台に電話してみようと思ったの」
僕は驚いた。すごい行動力、そして好奇心。こいつ、もしや……。
「でもさ。国立天文台のホームページ見たら、ちゃんと緯度と経度をはっきりさせてから電話して下さいって書いてあったの。そんなのわかんないじゃんねー!そんでさ、ツイッターでフォローしている天文学者の人に質問してみたんだ」
ええ!!なにあんた、天文学者のフォローしてるの?
え?すごくない?もしや、こいつ…。
「そしたらさ、返信が来て、どうやら火星だってことになったんだよ!返信きて、すごく嬉しかったなあ!」
総合的に判断して、こやつ、学者の才能がありそうだな…!!
見た目で人は判断できないとは、よく言ったものだ…。
才能を自覚して、発揮することの大切さ
彼女の中にある純粋で瞬発力のある好奇心、行動力、自然に興味のある対象に接近できる能力……これらはかけがえのない才能のように思えた。疑問をそのままにせず、すぐに行動を起こして解決に向かえる人間がどのくらいいようか? 彼女の素直さには見習うべき部分がある。
彼女は自分の中に素晴らしい才能があることを、自覚しているのだろうか。彼女が自覚せぬまま、自分の才能を発揮することのできない生き方をするとしたら、すごく残念だ。
何年かかってもいいから、遠回りしてもいいから、本人が自分の中にある素晴らしい特性に気づいてくれたら、と思っている。すべての人間がそうやって自覚できたら、もっと世の中明るく生きやすくならないかなあ…そんな期待をしてしまう。
(追伸)
またニックネームを変えました。伊藤にんじんです。